云ったって――それがなぜ悪いんでしょう」
「だって御互に世間に顔出しが出来ればこそ、こうやって今日《こんにち》を送っているんじゃありませんか。自分より世間の義理の方が大事でさあね」
「だって、こんなに出たいとおっしゃるんですもの。御可哀想《おかわいそう》じゃありませんか」
「そこが義理ですよ」
「それが義理なの。つまらないのね」
「つまらなかありませんやね」
「だって欽吾さんは、どうなっても構わない……」
「構わなかないんです。それがやっぱり欽吾のためになるんです」
「欽吾さんより御叔母《おば》さんのためになるんじゃないの」
「世の中への義理ですよ」
「分らないわ、私《わたし》には。――出たいものは世間が何と云ったって出たいんですもの。それが御叔母《おば》さんの迷惑になるはずはないわ」
「だって、こんな雨が降って……」
「雨が降っても、御叔母さんは濡《ぬ》れないんだから構わないじゃありませんか」
汽車のない時の事であった。山の男と海の男が喧嘩《けんか》をした。山の男が魚は塩辛いものだと云う。海の男が魚に塩気があるものかと云う。喧嘩はいつまで立っても鎮《しず》まらなかった。教育と名《な
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