…」
「面当は僕も嫌《きらい》だが、藤尾さんを助けるためだから仕方がない。あんな性格は尋常の手段じゃ直せっこない」
「しかし……」
「君が面目ないと云うのかね。こう云う羽目《はめ》になって、面目ないの、きまりが悪いのと云ってぐずぐずしているようじゃやっぱり上皮《うわかわ》の活動だ。君は今真面目になると云ったばかりじゃないか。真面目と云うのはね、僕に云わせると、つまり実行の二字に帰着するのだ。口だけで真面目になるのは、口だけが真面目になるので、人間が真面目になったんじゃない。君と云う一個の人間が真面目になったと主張するなら、主張するだけの証拠を実地に見せなけりゃ何にもならない。……」
「じゃやりましょう。どんな大勢の中でも構わない、やりましょう」
「宜《よ》ろしい」
「ところで、みんな打ち明けてしまいますが。――実は今日大森へ行く約束があるんです」
「大森へ。誰と」
「その――今の人とです」
「藤尾さんとかね。何時《なんじ》に」
「三時に停車場《ステーション》で出合うはずになっているんですが」
「三時と――今何時か知らん」
 ぱちりと宗近君の胴衣《チョッキ》の中ほどで音がした。
「もう二
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