く並べた。
孤堂先生の窪《くぼ》んだ眼《まなこ》は一度に鋭どくなった。やがて鋭どいものが一面に広がって顔中|苦々《にがにが》しくなる。
「廃《よ》した方が好《え》えですな」
置き失《な》くした験温器を捜《さ》がしていた、次の間の小夜子は、長火鉢の二番目の抽出《ひきだし》を二寸ほど抜いたまま、はたりと引く手を留めた。
先生の苦々《にがにが》しい顔は一層こまやかになる。想像力のない浅井君はとんと結果を予想し得ない。
「小野は近頃非常なハイカラになりました。あんな所へ行くのは御嬢さんの損です」
苦々しい顔はとうとう持ち切れなくなった。
「君は小野の悪口を云いに来たのかね」
「ハハハハ先生本当ですよ」
浅井君は妙なところで高笑をいた。
「余計な御世話だ。軽薄な」と鋭どく跳《は》ねつけた。先生の声はようやく尋常を離れる。浅井君は始めて驚ろいた。しばらく黙っている。
「おい験温器はまだか。何をぐずぐずしている」
次の間の返事は聞えなかった。ことりとも云わぬうちに、片寄せた障子《しょうじ》に影がさす。腰板の外《はずれ》から細い白木の筒《つつ》がそっと出る。畳の上で受取った先生はぽんと云わ
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