に嫌われたよ。黙ってる方がいい」
「うん黙っている」
「藤尾には君のような人格は解らない。浅墓《あさはか》な跳《は》ね返《かえ》りものだ。小野にやってしまえ」
「この通り頭ができた」
宗近君は節太《ふしぶと》の手を胸から抜いて、刈《か》り立《たて》の頭の天辺《てっぺん》をとんと敲いた。
甲野さんは眼尻に笑の波を、あるか、なきかに寄せて重々《おもおも》しく首肯《うなず》いた。あとから云う。
「頭ができれば、藤尾なんぞは要《い》らないだろう」
宗近君は軽くうふん[#「うふん」に傍点]と云ったのみである。
「それでようやく安心した」と甲野さんは、くつろいだ片足を上げて、残る膝頭《ひざがしら》の上へ載《の》せる。宗近君は巻煙草を燻《くゆ》らし始めた。吹く煙のなかから、
「これからだ」と独語《ひとりごと》のように云う。
「これからだ。僕もこれからだ」と甲野さんも独語のように答えた。
「君もこれからか。どうこれからなんだ」と宗近君は煙草の煙《けむ》を押し開いて、元気づいた顔を近寄《ちかよせ》た。
「本来の無一物から出直すんだからこれからさ」
指の股に敷島《しきしま》を挟んだまま、持って行く
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