」
「種を見せない以上は何とも云えないが、まあ勘弁してやろう。時に糸公御前今年|幾歳《いくつ》になるね」
「当てて御覧なさい」
「当てて見ないだって区役所へ行きゃ、すぐ分る事だが、ちょいと参考のために聞いて見るんだよ。隠さずに云う方が御前の利益だ」
「隠さずに云う方がだって――何だか悪い事でもしたようね。私《わたし》厭《いや》だわ、そんなに強迫されて云うのは」
「ハハハハさすが哲学者の御弟子だけあって、容易に権威に服従しないところが感心だ。じゃ改めて伺うが、取って御幾歳《おいくつ》ですか」
「そんな茶化《ちゃか》したって、誰が云うもんですか」
「困ったな。叮嚀《ていねい》に云えば云うで怒るし。――一だったかね。二かい」
「おおかたそんなところでしょう」
「判然しないのか。自分の年が判然しないようじゃ、兄さんも少々心細いな。とにかく十代じゃないね」
「余計な御世話じゃありませんか。人の年齢《とし》なんぞ聞いて。――それを聞いて何になさるの」
「なに別の用でもないが、実は糸公を御嫁にやろうと思ってさ」
冗談半分に相手になって、調戯《からかわ》れていた妹の様子は突然と変った。熱い石を氷の
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