」
宗近君は日本をえらくするとも、しないとも云わなかった。ふと手を伸《のば》すと更紗《さらさ》の結襟《ネクタイ》が白襟《カラ》の真中《まんなか》まで浮き出して結目《むすびめ》は横に捩《ねじ》れている。
「どうも、この襟飾《えりかざり》は滑《すべ》っていけない」と手探《てさぐり》に位地を正しながら、
「じゃ糸にちょっと話しましょう」と立ちかける。
「まあ御待ち、少し相談がある」
「何ですか」と立ち掛けた尻を卸《おろ》す機会《しお》に、準胡坐《じゅんあぐら》の姿勢を取る。
「実は今までは、御前の位地もまだきまっていなかったから、さほどにも云わなかったが……」
「嫁ですかね」
「そうさ。どうせ外国へ行くなら、行く前にきめるとか、結婚するとか、または連れて行くとか……」
「とても連れちゃ行かれませんよ。金が足りないから」
「連れて行かんでも好い。ちゃんと片をつけて、そうして置いて行くなら。留守中は私《わし》が大事に預かってやる」
「私《わたし》もそうしようと思ってるんです」
「どうだなそこで。気に入った婦人でもあるかな」
「甲野の妹を貰うつもりなんですがね。どうでしょう」
「藤尾《ふじお》か
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