こんな事が、かいてある。
「剣客の剣を舞わすに、力|相若《あいし》くときは剣術は無術と同じ。彼、これを一籌《いっちゅう》の末に制する事|能《あた》わざれば、学ばざるものの相対して敵となるに等しければなり。人を欺《あざむ》くもまたこれに類す。欺かるるもの、欺くものと一様の譎詐《きっさ》に富むとき、二人《ににん》の位地は、誠実をもって相対すると毫《ごう》も異なるところなきに至る。この故に偽[#「偽」に傍点]と悪[#「悪」に傍点]とは優勢[#「優勢」に傍点]を引いて援護となすにあらざるよりは、不足偽《ふそくぎ》、不足悪に出会《しゅっかい》するにあらざるよりは、最後に、至善を敵とするにあらざるよりは、――効果を収むる事|難《かた》しとす。第三の場合は固《もと》より稀《まれ》なり。第二もまた多からず。凶漢は敗徳において匹敵《ひってき》するをもって常態とすればなり。人|相賊《あいぞく》してついに達する能《あた》わず、あるいは千辛万苦して始めて達し得べきものも、ただ互に善を行い徳を施こして容易に到《いた》り得べきを思えば、悲しむべし」
甲野さんはまた日記を取り上げた。青貝の洋筆軸《ペンじく》を、ぽ
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