様子が違う。
「旨いんだろう、何となく眠気《ねむけ》を催したから」
「ハハハハそれこそアイロニーだ」と小野さんは笑った。小野さんの笑い声はいかなる場合でも静の一字を離れない。その上|色彩《つや》がある。
「冷やかすんじゃない。真面目《まじめ》なところだ。かりそめにも君の恩師の令嬢を馬鹿にしちゃ済まない」
「しかし眠気を催しちゃ困りますね」
「眠気を催おすところが好いんだ。人間でもそうだ。眠気を催おすような人間はどこか尊《たっ》といところがある」
「古くって尊といんでしょう」
「君のような新式な男はどうしても眠くならない」
「だから尊とくない」
「ばかりじゃない。ことに依ると、尊とい人間を時候|後《おく》れだなどとけなしたがる」
「今日は何だか攻撃ばかりされている。ここいらで御分れにしましょうか」と小野さんは少し苦しいところを、わざと笑って、立ち留る。同時に右の手を出す。紙屑籠を受取ろうと云う謎《なぞ》である。
「いや、もう少し持ってやる。どうせ暇なんだから」
二人はまた歩き出す。二人が二人の心を並べたままいっしょに歩き出す。双方で双方を軽蔑《けいべつ》している。
「君は毎日暇のようで
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