どこから」
「どこからか分るものか、たかの知れた京都の山だ」
 瘠《や》せた男は何にも云わずににやにやと笑った。四角な男は威勢よく喋舌《しゃべ》り続ける。
「君のように計画ばかりしていっこう実行しない男と旅行すると、どこもかしこも見損《みそこな》ってしまう。連《つれ》こそいい迷惑だ」
「君のようにむちゃに飛び出されても相手は迷惑だ。第一、人を連れ出して置きながら、どこから登って、どこを見て、どこへ下りるのか見当《けんとう》がつかんじゃないか」
「なんの、これしきの事に計画も何もいったものか、たかがあの山じゃないか」
「あの山でもいいが、あの山は高さ何千尺だか知っているかい」
「知るものかね。そんな下らん事を。――君知ってるのか」
「僕も知らんがね」
「それ見るがいい」
「何もそんなに威張らなくてもいい。君だって知らんのだから。山の高さは御互に知らんとしても、山の上で何を見物して何時間かかるぐらいは多少確めて来なくっちゃ、予定通りに日程は進行するものじゃない」
「進行しなければやり直すだけだ。君のように余計な事を考えてるうちには何遍でもやり直しが出来るよ」となおさっさと行く。瘠《や》せた
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