金縁の眼鏡《めがね》を硝子窓に擦《す》り寄せて余念なく見取れている。
 小羊《ラム》の皮を柔らかに鞣《なめ》して、木賊色《とくさいろ》の濃き真中に、水蓮《すいれん》を細く金に描《えが》いて、弁《はなびら》の尽くる萼《うてな》のあたりから、直なる線を底まで通して、ぐるりと表紙の周囲を回《まわ》らしたのがある。背を平らに截《た》って、深き紅《くれない》に金髪を一面に這《は》わせたような模様がある。堅き真鍮版《しんちゅうばん》に、どっかと布《クロース》の目を潰《つぶ》して、重たき箔《はく》を楯形《たてがた》に置いたのがある。素気《すげ》なきカーフの背を鈍色《にびいろ》に緑に上下《うえした》に区切って、双方に文字だけを鏤《ちりば》めたのがある。ざら目の紙に、品《ひん》よく朱の書名を配置した扉《とびら》も見える。
「みんな欲しそうだね」と宗近君は書物を見ずに、小野さんの眼鏡ばかり見ている。
「みんな新式な装釘《バインジング》だ。どうも」
「表紙だけ奇麗にして、内容の保険をつけた気なのかな」
「あなた方のほうと違って文学書だから」
「文学書だから上部《うわべ》を奇麗にする必要があるのかね。それじゃ
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