の道具で繋《つな》がれる。忽然《こつぜん》として午睡の夢から起きた黒田さんは器械的に縁《えにし》の糸を二人の間に渡したまま、朦朧《もうろう》たる精神を毬栗頭《いがぐりあたま》の中に封じ込めて、再び書生部屋へ引き下がる。あとは故《もと》の空屋敷《あきやしき》となる。
「昨夕《ゆうべ》は、どうでした。疲れましたろう」
「いいえ」
「疲れない? 私《わたし》より丈夫だね」と甲野さんは少し笑い掛けた。
「だって、往復《ゆきかえり》共電車ですもの」
「電車は疲れるもんですがね」
「どうして」
「あの人で。あの人で疲れます。そうでも無いですか」
 糸子は丸い頬に片靨《かたえくぼ》を見せたばかりである。返事はしなかった。
「面白かったですか」と甲野さんが聞く。
「ええ」
「何が面白かったですか。イルミネーションがですか」
「ええ、イルミネーションも面白かったけれども……」
「イルミネーションのほかに何か面白いものが有ったんですか」
「ええ」
「何が」
「でもおかしいわ」と首を傾《かた》げて愛らしく笑っている。要領を得ぬ甲野さんも何となく笑いたくなる。
「何ですかその面白かったものは」
「云って見まし
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