くままの藤尾の眉が活きて来る。
玩具にされたのならこのままでは置かぬ。我《が》は愛を八《や》つ裂《ざき》にする。面当《つらあて》はいくらもある。貧乏は恋を乾干《ひぼし》にする。富貴《ふうき》は恋を贅沢《ぜいたく》にする。功名は恋を犠牲にする。我は未練な恋を踏みつける。尖《とが》る錐《きり》に自分の股《もも》を刺し通して、それ見ろと人に示すものは我である。自己がもっとも価《あたい》ありと思うものを捨てて得意なものは我である。我が立てば、虚栄の市にわが命さえ屠《ほふ》る。逆《さか》しまに天国を辞して奈落の暗きに落つるセータンの耳を切る地獄の風は我《プライド》! 我《プライド》! と叫ぶ。――藤尾は俯向《うつむき》ながら下唇を噛《か》んだ。
逢《あ》わぬ四五日は手紙でも出そうかと思っていた。昨夕《ゆうべ》帰ってからすぐ書きかけて見たが、五六行かいた後で何をとずたずたに引き裂いた。けっして書くまい。頭を下げて先方から折れて出るのを待っている。だまっていればきっと出てくる。出てくれば謝罪《あやま》らせる。出て来なければ? 我はちょっと困った。手の届かぬところに我を立てようがない。――なに来る
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