べてを溶《と》かす。角張《かどば》った絵紙鳶《えだこ》も飴細工《あめざいく》であるからは必ず流れ出す。我は愛の水に浸して、三日三晩の長きに渉《わた》ってもふやける[#「ふやける」に傍点]気色《けしき》を見せぬ。どこまでも堅く控えている。我を立てて恋をするものは氷砂糖である。
 沙翁《シェクスピア》は女を評して脆《もろ》きは汝が名なりと云った。脆きが中に我を通す昂《あが》れる恋は、炊《かし》ぎたる飯の柔らかきに御影《みかげ》の砂を振り敷いて、心を許す奥歯をがりがりと寒からしむ。噛《か》み締めるものに護謨《ゴム》の弾力がなくては無事には行かぬ。我の強い藤尾は恋をするために我のない小野さんを択《えら》んだ。蜘蛛の囲にかかる油蝉《あぶらぜみ》はかかっても暴れて行かぬ。時によると網を破って逃げる事がある。宗近《むねちか》君を捕《と》るは容易である。宗近君を馴《な》らすは藤尾といえども困難である。我《が》の女は顋《あご》で相図をすれば、すぐ来るものを喜ぶ。小野さんはすぐ来るのみならず、来る時は必ず詩歌《しいか》の璧《たま》を懐《ふところ》に抱《いだ》いて来る。夢にだもわれを弄《もてあそ》ぶの意思な
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