おさ》えるように、前へ垂れる。障子に近い片頬は、圧《お》し付けられた手の痕《あと》を耳朶《みみたぶ》共にぽうと赤く染めている。奇麗に囲う二重《ふたえ》の瞼《まぶた》は、涼しい眸《ひとみ》を、長い睫《まつげ》に隠そうとして、上の方から垂れかかる。宗近君はこの睫の奥からしみじみと妹に見られた。――四角な肩へ肉を入れて、倒した胴を肘《ひじ》に撥《は》ねて起き上がる。
「糸公、おれは叔父さんの金時計を貰う約束があるんだよ」
「叔父さんの?」と軽く聞き返して、急に声を落すと「だって……」と云うや否や、黒い眸は長い睫の裏にかくれた。派出《はで》な色の絹紐《リボン》がちらりと前の方へ顔を出す。
「大丈夫だ。京都でも甲野に話して置いた」
「そう」と俯目《ふしめ》になった顔を半ば上げる。危ぶむような、慰めるような笑が顔と共に浮いて来る。
「兄さんが今に外国へ行ったら、御前に何か買って送ってやるよ」
「今度《こんだ》の試験の結果はまだ分らないの」
「もう直《じき》だろう」
「今度は是非及第なさいよ」
「え、うん。アハハハハ。まあ好いや」
「好《よ》かないわ。――藤尾さんはね。学問がよく出来て、信用のある方
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