野さんは昔の通り親切である。父も左様《さよう》に云う。自分もそう思う。しかし寄りつけない。
プラット・フォームを下りるや否や御荷物をと云った。小《ち》さい手提《てさげ》の荷にはならず、持って貰うほどでもないのを無理に受取って、膝掛《ひざかけ》といっしょに先へ行った、刻《きざ》み足の後《うし》ろ姿を見たときに――これはと思った。先へ行くのは、遥々《はるばる》と来た二人を案内するためではなく、時候|後《おく》れの親子を追い越して馳《か》け抜けるためのように見える。割符《わりふ》とは瓜《うり》二つを取ってつけて較《くら》べるための証拠《しるし》である。天に懸《かか》る日よりも貴《とうと》しと護《まも》るわが夢を、五年《いつとせ》の長き香洩《かも》る「時」の袋から現在に引き出して、よも間違はあるまいと見較べて見ると、現在ははやくも遠くに立ち退《の》いている。握る割符は通用しない。
始めは穴を出でて眩《まばゆ》き故と思う。少し慣《な》れたらばと、逝《ゆ》く日を杖《つえ》に、一度逢い、二度逢い、三度四度と重なるたびに、小野さんはいよいよ丁寧になる。丁寧になるにつけて、小夜子はいよいよ近寄りがた
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