は、手巾《ハンケチ》を出して、薄い口髭《くちひげ》をちょっと撫《な》でる。幽《かす》かな香《におい》がぷんとする。強いのは下品だと云う。
「京都にはだいぶ御知合があるでしょう。京都の方《かた》を一《はじめ》さんに御世話なさいよ。京都には美人が多いそうじゃありませんか」
 小野さんの手巾はちょっと勢《いきおい》を失った。
「なに実際美しくはないんです。――帰ったら甲野君に聞いて見ると分ります」
「兄がそんな話をするものですか」
「それじゃ宗近君に」
「兄は大変美人が多いと申しておりますよ」
「宗近君は前にも京都へいらしった事があるんですか」
「いいえ、今度が始めてですけれども、手紙をくれまして」
「おや、それじゃ鉄砲玉じゃないのね。手紙が来たの」
「なに端書よ。都踊の端書をよこして、そのはじに京都の女はみんな奇麗《きれい》だと書いてあるのよ」
「そう。そんなに奇麗なの」
「何だか白い顔がたくさん並んでてちっとも分らないわ。ただ見たら好いかも知れないけれども」
「ただ見ても白い顔が並んどるばかりです。奇麗は奇麗ですけれども、表情がなくって、あまり面白くはないです」
「それから、まだ書いてあ
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