教育と文芸
――明治四十四年六月十八日長野県会議事院において――
夏目漱石

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)凡《およ》そ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)出|懸《か》けて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ]
−−

 私は思いがけなく前から当地の教育会の御招待を受けました。凡《およ》そ一カ月前に御通知がありましたが、私は、その時になって見なければ、出られるか出られぬか分らぬために、直《すぐ》にお答をすることが出来ませんでした。しかし、御懇切《ごこんせつ》の御招待ですから義理にもと思いまして体だけ出|懸《か》けて参りました。別に面白いお話も出来ません、前《ぜん》申した通り体だけ義理にもと出かけたわけであります。
 私のやる演題はこういう教育会の会場での経験がないのでこまりました。が、名が教育会であるし、引受ける私は文学に関係あるものであるから、教育と文芸という事にするが能《よ》いと思いまして、こういう題にしました。この教育と文芸というのは、諸君が主であるからまげて教育をさきとしたのでありま
次へ
全16ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング