カーライル博物館
夏目漱石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)釜形《かまがた》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五階|立《だて》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「けものへん+廣」第4水準 2−80−55]
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 公園の片隅に通りがかりの人を相手に演説をしている者がある。向うから来た釜形《かまがた》の尖《とが》った帽子を被《か》ずいて古ぼけた外套《がいとう》を猫背《ねこぜ》に着た爺《じい》さんがそこへ歩みを佇《とど》めて演説者を見る。演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの村夫子《そんぷうし》のたたずめる前に出て来る。二人の視線がひたと行き当る。演説者は濁りたる田舎調子《いなかぢょうし》にて御前はカーライルじゃないかと問う。いかにもわしはカーライルじゃと村夫子が答える。チェルシーの哲人《セージ》と人が言囃《いいはや》すのは御前の事かと問う。なるほど世間ではわしの事をチェルシーの哲人《セージ》と云うようじゃ。セージと云う
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