イズムの功過
夏目漱石

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)几帳面《きちょうめん》な

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)比較的|緻密《ちみつ》な

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)充※[#「仞」のにんべんに代えて牛へん、第4水準2−80−18]《じゅうじん》
−−

 大抵のイズムとか主義とかいうものは無数の事実を几帳面《きちょうめん》な男が束《たば》にして頭の抽出《ひきだし》へ入れやすいように拵《こしら》えてくれたものである。一纏《ひとまと》めにきちりと片付いている代りには、出すのが臆劫《おっくう》になったり、解《ほど》くのに手数がかかったりするので、いざという場合には間に合わない事が多い。大抵のイズムはこの点において、実生活上の行為を直接に支配するために作られたる指南車《しなんしゃ》というよりは、吾人《ごじん》の知識欲を充たすための統一函である。文章ではなくって字引である。
 同時に多くのイズムは、零砕《れいさい》の類例が、比較的|
次へ
全5ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング