緻密《ちみつ》な頭脳に濾過《ろか》されて凝結《ぎょうけつ》した時に取る一種の形である。形といわんよりはむしろ輪廓《りんかく》である。中味《なかみ》のないものである。中味を棄てて輪廓だけを畳《たた》み込むのは、天保銭《てんぽうせん》を脊負う代りに紙幣を懐《ふところ》にすると同じく小さな人間として軽便《けいべん》だからである。
この意味においてイズムは会社の決算報告に比較すべきものである。更に生徒の学年成績に匹敵《ひってき》すべきものである。僅《わずか》一行の数字の裏面《りめん》に、僅か二位の得点の背景に殆どありのままには繰返しがたき、多くの時と事と人間と、その人間の努力と悲喜と成敗《せいはい》とが潜《ひそ》んでいる。
従ってイズムは既に経過せる事実を土台として成立するものである。過去を総束《そうそく》するものである。経験の歴史を簡略にするものである。与えられたる事実の輪廓である。型である。この型を以て未来に臨《のぞ》むのは、天の展開する未来の内容を、人の頭で拵《こしら》えた器《うつわ》に盛終《もりおお》せようと、あらかじめ待ち設《もう》けると一般である。器械的な自然界の現象のうち、尤
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