、腹《はら》の中《なか》で、
「万事終る」と宣告した。
雨は夕方|歇《や》んで、夜《よ》に入つたら、雲がしきりに飛《と》んだ。其|中《うち》洗つた様な月が出《で》た。代助は光《ひかり》を浴《あ》びる庭の濡葉《ぬれは》を長い間《あひだ》椽側から眺《なが》めてゐたが、仕舞に下駄を穿《は》いて下《した》へ降《お》りた。固より広い庭でない上《うへ》に立木《たちき》の数《かず》が存外多いので、代助の歩《ある》く積《せき》はたんと無《な》かつた。代助は其|真中《まんなか》に立つて、大《おほ》きな空《そら》を仰いだ。やがて、座敷から、昼間《ひるま》買つた百合《ゆり》の花を取つて来《き》て、自分の周囲《まはり》に蒔《ま》き散らした。白い花瓣《くわべん》が点々《てん/\》として月の光《ひかり》に冴《さ》えた。あるものは、木下|闇《やみ》に仄《ほの》めいた。代助は何をするともなく其|間《あひだ》に曲《かゞ》んでゐた。
寐る時になつて始めて座敷へ上《あ》がつた。室《へや》の中《なか》は花の香《にほひ》がまだ全く抜《ぬ》けてゐなかつた。
十五の一
三千代に逢つて、云ふべき事を云つて仕舞
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