が其|裏《うら》を行《ゆ》くのが癪《しやく》だから、向ふの疳違《かんちがひ》は、疳違《かんちがひ》で構《かま》はないとして置《お》いて、此方《こつち》は此方《こつち》の歩《ほ》を進める態度《たいど》に出《で》た。けれども第一に困《こま》つたのは、平岡の勝手|元《もと》の都合を、三千代の訴《うつた》へによつて知《し》つたと切《き》り出《だ》しては、三千代に迷惑《めいわく》が掛《かゝ》るかも知れない。と云つて、問題が其所《そこ》に触《ふ》れなければ、忠告も助言も全く無益である。代助は仕方《しかた》なしに迂回《うくわい》した。
「君《きみ》は近来|斯《か》う云ふ所へ大分《だいぶ》頻繁《ひんぱん》に出《で》はいりをすると見《み》えて、家《うち》のものとは、みんな御|馴染《なじみ》だね」
「君《きみ》の様に金回《かねまは》りが好《よ》くないから、さう豪遊も出来ないが、交際《つきあひ》だから仕方がないよ」と云つて、平岡は器用な手付《てつき》をして猪口《ちよく》を口《くち》へ着《つ》けた。
「余計な事だが、それで家《うち》の方《ほう》の経済は、収支|償《つぐ》なふのかい」と代助は思ひ切つて猛進した。
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