決心であつた。給仕に名刺を渡《わた》して、埃《ほこり》だらけの受付《うけつけ》に待《ま》つてゐる間《あひだ》、彼《かれ》はしばしば袂《たもと》から手帛《ハンケチ》を出《だ》して、鼻を掩ふた。やがて、二階の応接|間《ま》へ案内された。其所《そこ》は風|通《とほ》しの悪《わる》い、蒸《む》し暑《あつ》い、陰気な狭《せま》い部屋であつた。代助は此所《こゝ》で烟草《たばこ》を一本|吹《ふ》かした。編輯室と書《か》いた戸口《とぐち》が始終|開《あ》いて、人《ひと》が出《で》たり這入《はい》つたりした。代助の逢《あ》ひに来《き》た平岡も其|戸口《とぐち》から現《あら》はれた。先達て見《み》た夏服《なつふく》を着《き》て、相変らず奇麗な襟《カラ》とカフスを掛《か》けてゐた。忙《いそが》しさうに、
「やあ、暫《しばら》く」と云つて代助の前《まへ》に立《た》つた。代助も相手に唆《そゝの》かされた様に立ち上《あ》がつた。二人《ふたり》は立《た》ちながら一寸《ちよつと》話《はなし》をした。丁度編輯のいそがしい時《とき》で緩《ゆつ》くり何《ど》うする事も出来なかつた。代助は改めて平岡の都合を聞いた。平岡はポツ
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