たらしい。
「大変|遅《おそ》うがしたな。明日《あした》は何時《なんじ》の汽車で御|立《た》ちですか」と玄関へ上《あが》るや否《いな》や問《とひ》を掛《か》けた。代助は、微笑しながら、
「明日《あした》も御|已《や》めだ」と答《こた》へて、自分の室《へや》へ這入《はい》つた。そこには床《とこ》がもう敷《し》いてあつた。代助は先刻《さつき》栓《せん》を抜《ぬ》いた香水を取つて、括枕《くゝりまくら》の上《うへ》に一滴《いつてき》垂《た》らした。夫《それ》では何だか物足《ものた》りなかつた。壜《びん》を持《も》つた儘《まゝ》、立《た》つて室《へや》の四隅《よすみ》へ行《い》つて、そこに一二滴づゝ振《ふ》りかけた。斯様《かやう》に打《う》ち興《きよう》じた後《あと》、白地《しろぢ》の浴衣《ゆかた》に着換《きか》えて、新《あた》らしい小|掻巻《かいまき》の下《した》に安《やすら》かな手足《てあし》を横《よこ》たへた。さうして、薔薇《ばら》の香《か》のする眠《ねむり》に就《つ》いた。
眼《め》が覚《さ》めた時は、高い日《ひ》が椽に黄|金色《ごんしよく》の震動を射込んでゐた。枕元《まくらもと》には
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