に星《ほし》がぽつ/\影《かげ》を増《ま》して行く様に見えた。心持《こゝろもち》の好《い》い風《かぜ》が袂《たもと》を吹《ふ》いた。けれども長《なが》い足《あし》を大きく動かした代助は、二三町も歩《ある》かないうちに額際《ひたひぎは》に汗《あせ》を覚えた。彼は頭《あたま》から鳥打を脱《と》つた。黒い髪《かみ》を夜露《よつゆ》に打たして、時々《とき/″\》帽子をわざと振《ふ》つて歩《ある》いた。
 平岡の家《いへ》の近所へ来《く》ると、暗《くら》い人影《ひとかげ》が蝙蝠《かはほり》の如く静《しづ》かに其所《そこ》、此所《こゝ》に動《うご》いた。粗末な板塀《いたべい》の隙間《すきま》から、洋燈《ランプ》の灯《ひ》が往来へ映《うつ》つた。三千代《みちよ》は其光《そのひかり》の下《した》で新聞を読《よ》んでゐた。今頃《いまごろ》新聞を読むのかと聞《き》いたら、二返目だと答へた。
「そんなに閑《ひま》なんですか」と代助は座蒲団を敷居の上に移《うつ》して、椽側へ半分|身体《からだ》を出《だ》しながら、障子へ倚りかゝつた。
 平岡は居なかつた。三千代《みちよ》は今《いま》湯から帰《かへ》つた所だと云
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