事が時々《とき/″\》あつた。けれども、只《たゞ》の一返も腹《はら》を立《た》てた事はなかつた。今度《こんど》の狂言も、平生ならば、退屈|紛《まぎ》らしの遊戯程度に解釈して、笑つて仕舞たかも知れない。夫許《そればかり》ではない。もし自分が結婚する気なら、却つて、此狂言を利用して、自《みづか》ら人巧的に、御目出度《おめでたい》喜劇《きげき》を作り上《あ》げて、生涯自分を嘲《あざ》けつて満足する事も出来た。然し此姉《このあね》迄が、今《いま》の自分を、父《ちゝ》や兄《あに》と共謀して、漸々《ぜん/\》窮地に誘《いざ》なつて行《ゆ》くかと思ふと、流石《さす》がに此|所作《しよさ》をたゞの滑稽として、観察する訳には行《い》かなかつた。代助は此先《このさき》、嫂《あによめ》が此事件を何《ど》う発展させる気だらうと考へて、少々弱つた。家《うち》のものゝ中《うち》で、嫂《あによめ》が一番|斯《こ》んな計画に興味をもつてゐたからである。もし嫂《あによめ》が此方面に向つて代助に肉薄すればする程、代助は漸々|家族《かぞく》のものと疎遠にならなければならないと云ふ恐れが、代助の頭《あたま》の何処《どこ》かに
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