の隙間《すきま》から頭《あたま》の上《うへ》を照《て》らした。先《さき》へ行《ゆ》く梅子と縫子は傘《かさ》を広《ひろ》げた。代助は時々《とき/″\》手《て》の甲《かう》を額《ひたひ》の前《まへ》に翳《かざ》した。
芝居の中《なか》では、嫂《あによめ》も縫《ぬひ》子も非常に熱心な観客《けんぶつ》であつた。代助は二返|目《め》の所為《せゐ》といひ、此|三四日来《さんよつからい》の脳の状態からと云ひ、左様《さう》一図に舞台ばかりに気を取《と》られてゐる訳《わけ》にも行《い》かなかつた。堪えず精神に重苦しい暑《あつさ》を感ずるので、屡|団扇《うちは》を手《て》にして、風《かぜ》を襟《えり》から頭《あたま》へ送《おく》つてゐた。
幕《まく》の合間《あひま》に縫子が代助の方を向《む》いて時々《とき/″\》妙な事を聞《き》いた。何故《なぜ》あの人は盥《たらひ》で酒を飲むんだとか、何故《なぜ》坊さんが急に大将になれるんだとか、大抵説明の出来ない質問のみであつた。梅子はそれを聞くたんびに笑つてゐた。代助は不図二三日前新聞で見た、ある文学者の劇評を思ひ出《だ》した。それには、日本の脚本が、あまりに突飛
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