点に於てそれを尤も道徳的なものと心得てゐた。
此主義を出来る丈遂行する彼《かれ》は、其遂行の途中で、われ知らず、自分のとうに棄却した問題に襲はれて、自分は今何の為《ため》に、こんな事をしてゐるのかと考へ出《だ》す事がある。彼が番町を散歩しながら、何故《なぜ》散歩しつゝあるかと疑つたのは正に是《これ》である。
其時|彼《かれ》は自分ながら、自分の活力の充実してゐない事に気がつく。餓えたる行動は、一気に遂行する勇気と、興味に乏しいから、自《みづか》ら其行動の意義を中途で疑ふ様になる。彼はこれをアンニユイと名《なづ》けてゐた。アンニユイに罹《かゝ》ると、彼は論理の迷乱を引き起すものと信じてゐた。彼の行為の中途に於て、何《なに》の為《ため》と云ふ、冠履顛倒の疑を起させるのは、アンニユイに外《ほか》ならなかつたからである。
彼《かれ》は立《た》て切《き》つた室《へや》の中《なか》で、一二度|頭《あたま》を抑えて振《ふ》り動《うご》かして見た。彼は昔《むかし》から今日《こんにち》迄の思索家の、屡《しばしば》繰《く》り返《かへ》した無意義な疑義を、又|脳裏《のうり》に拈定《ねんてい》するに堪え
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