く此間《このあひだ》浅草の奥山《おくやま》へ一所に連《つ》れて行《い》つた結果である。あの一図な所はよく、嫂《あによめ》の気性を受け継《つ》いでゐる。然し兄《あに》の子丈あつて、一図なうちに、何処《どこ》か逼《せま》らない鷹揚《おほよう》な気象がある。誠太郎の相手をしてゐると、向ふの魂《たましひ》が遠慮なく此方《こつち》へ流《なが》れ込《こ》んで来《く》るから愉快である。実際代助は、昼夜《ちうや》の区別なく、武装を解《と》いた事《こと》のない精神に、包囲されるのが苦痛であつた。
 誠太郎は此春《このはる》から中学校へ行き出《だ》した。すると急に脊丈《せたけ》が延《の》びて来《く》る様に思はれた。もう一二年すると声が変《かは》る。それから先《さき》何《ど》んな径路《けいろ》を取つて、生長するか分《わか》らないが、到底|人間《にんげん》として、生存する為《ため》には、人間《にんげん》から嫌《きら》はれると云ふ運命に到着するに違《ちがひ》ない。其時《そのとき》、彼《かれ》は穏《おだ》やかに人の目に着《つ》かない服装《なり》をして、乞食《こじき》の如く、何物をか求めつゝ、人《ひと》の市《いち》
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