うり》を穿《は》いて来《き》たんですもの」
 三千代は寧ろ恨《うら》めしさうに樋から洩《も》る雨点《あまだれ》を眺《なが》めた。
「帰《かへ》りには車《くるま》を云ひ付《つ》けて上《あ》げるから可《い》いでせう。緩《ゆつく》りなさい」
 三千代はあまり緩《ゆつく》り出来《でき》さうな様子も見えなかつた。まともに、代助の方を見て、
「貴方《あなた》も相変らず呑気《のんき》な事を仰《おつ》しやるのね」と窘《たしな》めた。けれども其|眼元《めもと》には笑《わらひ》の影《かげ》が泛《うか》んでゐた。
 今迄三千代の陰《かげ》に隠《かく》れてぼんやりしてゐた平岡の顔《かほ》が、此時|明《あき》らかに代助の心《こゝろ》の瞳《ひとみ》に映《うつ》つた。代助は急に薄暗《うすくら》がりから物《もの》に襲はれた様な気がした。三千代は矢張り、離《はな》れ難《がた》い黒い影《かげ》を引き摺《ず》つて歩《ある》いてゐる女であつた。
「平岡君は何《ど》うしました」とわざと何気《なにげ》なく聞《き》いた。すると三千代の口元《くちもと》が心持《こゝろもち》締《しま》つて見えた。
「相変らずですわ」
「まだ何《なん》に
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