《ひるね》を貪《むさ》ぼつた時は、あまりに溌溂たる宇宙の刺激に堪えなくなつた頭《あたま》を、出来《でき》るならば、蒼《あを》い色《いろ》の付《つ》いた、深《ふか》い水《みづ》の中《なか》に沈《しづ》めたい位に思つた。それ程|彼《かれ》は命《いのち》を鋭《するど》く感じ過《す》ぎた。従つて熱《あつ》い頭《あたま》を枕へ着《つ》けた時は、平岡も三千代も、彼に取つて殆んど存在してゐなかつた。彼は幸にして涼《すゞ》しい心持に寐《ね》た。けれども其|穏《おだ》やかな眠《ねむり》のうちに、誰《だれ》かすうと来《き》て、又すうと出《で》て行《い》つた様な心持がした。眼《め》を醒《さ》まして起《お》き上《あ》がつても其感じがまだ残つてゐて、頭《あたま》から拭《ぬぐ》ひ去る事が出来なかつた。それで門野を呼んで、寐《ね》てゐる間《あひだ》に誰《だれ》か来《き》はしないかと聞《き》いたのである。
代助は両手を額《ひたひ》に当《あ》てゝ、高《たか》い空《そら》を面白さうに切《き》つて廻《まは》る燕《つばめ》の運動を椽側から眺めてゐたが、やがて、それが眼《め》ま苦《ぐる》しくなつたので、室《へや》の中《なか》
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