ら余《あま》りに明《あか》る過《すぎ》るものに接すると、其矛盾に堪えがたかつた。擬宝珠《ぎぼしゆ》の葉《は》も長く見詰めてゐると、すぐ厭《いや》になる位であつた。
其上《そのうへ》彼《かれ》は、現代の日本に特有なる一種の不安に襲はれ出《だ》した。其不安は人と人との間《あひだ》に信仰がない源因から起《おこ》る野蛮程度の現象であつた。彼は此心的現象のために甚しき動揺を感じた。彼は神《かみ》に信仰を置く事を喜《よろこ》ばぬ人であつた。又頭脳の人として、神に信仰を置く事の出来ぬ性質《たち》であつた。けれども、相互《さうご》に信仰を有するものは、神に依頼するの必要がないと信じてゐた。相互が疑ひ合ふときの苦しみを解脱《げだつ》する為めに、神は始めて存在の権利を有するものと解釈してゐた。だから、神《かみ》のある国では、人が嘘《うそ》を吐《つ》くものと極《き》めた。然し今の日本は、神《かみ》にも人《ひと》にも信仰のない国柄《くにがら》であるといふ事を発見した。さうして、彼《かれ》は之を一《いつ》に日本の経済事情に帰着せしめた。
四五日前、彼は掏摸《すり》と結託して悪事を働らいた刑事巡査の話を新聞で
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