枕《まくら》を置《お》いて仰向《あほむ》けに倒れた。黒《くろ》い頭《あたま》が丁度|鉢《はち》の陰《かげ》になつて、花から出《で》る香《にほひ》が、好《い》い具合に鼻《はな》に通《かよ》つた。代助は其香《そのにほひ》を嗅《か》ぎながら仮寐《うたゝね》をした。
代助は時々《とき/″\》尋常な外界から法外に痛烈な刺激を受ける。それが劇《はげ》しくなると、晴天から来《く》る日光《につこう》の反射にさへ堪へ難くなる事があつた。さう云ふ時には、成る可《べ》く世間《せけん》との交渉を稀薄にして、朝《あさ》でも午《ひる》でも構はず寐《ね》る工夫をした。其手段には、極めて淡《あわ》い、甘味《あまみ》の軽《かる》い、花《はな》の香《か》をよく用ひた。瞼《まぶた》を閉《と》ぢて、瞳《ひとみ》に落《お》ちる光線を謝絶して、静かに鼻《はな》の穴《あな》丈で呼吸《こきう》してゐるうちに、枕元《まくらもと》の花《はな》が、次第に夢《ゆめ》の方《ほう》へ、躁《さわ》ぐ意識を吹《ふ》いて行く。是が成功すると、代助の神経が生《うま》れ代《かは》つた様に落ち付いて、世間《せけん》との連絡《れんらく》が、前よりは比較的|
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