ねころ》んで仕舞つた。
「何《なに》か日糖事件に関係でもあつたんですか」と代助が聞いた。
「日糖事件に関係はないが、忙《いそが》しかつた」
兄《あに》の答は何時《いつ》でも此程度以上に明瞭になつた事がない。実は明瞭に話したくないんだらうけれども、代助の耳には、夫が本来の無頓着で、話すのが臆怯なためと聞える。だから代助はいつでも楽《らく》に其返事の中《なか》に這入《はいつ》てゐた。
「日糖も詰《つま》らない事《こと》になつたが、あゝなる前に何《ど》うか方法はないもんでせうかね」
「左《さ》うさなあ。実際|世《よ》の中《なか》の事は、何《なに》が何《ど》うなるんだか分《わか》らないからな。――梅《うめ》、今日《けふ》は直木《なほき》に云ひ付《つ》けて、ヘクターを少し運動させなくつちや不可《いけな》いよ。あゝ大食《おほぐひ》をして寐て許《ばかり》ゐちや毒だ」と誠吾は眠《ねむ》さうな瞼《まぶた》を指《ゆび》でしきりに擦《こす》つた。代助は、
「愈《いよ/\》奥《おく》へ行《い》つて御父《おとう》さんに叱《しか》られて来《く》るかな」と云ひながら又|洋盞《コツプ》を嫂《あによめ》の前へ出《だ》
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