てゐた。代助は一口《ひとくち》飲《の》んで盃《さかづき》を下《した》へ下《おろ》した。肴《さかな》の代りに薄いウエーファーが菓子|皿《ざら》にあつた。
「旨《うま》いですね」と云つた。
「だから時代を当《あ》てゝ御覧なさいよ」
「時代《じだい》があるんですか。偉《えら》いものを買ひ込んだもんだね。帰《かへ》りに一本《いつぽん》貰《もら》つて行《い》かう」
「御生憎様、もう是限《これぎり》なの。到来物《とうらいもの》よ」と云つて梅子は椽側へ出《で》て、膝《ひざ》の上《うへ》に落《お》ちたウエーフアーの粉《こ》を払《はた》いた。
「兄《にい》さん、今日《けふ》は何《ど》うしたんです。大変気楽さうですね」と代助が聞《き》いた。
「今日《けふ》は休養だ。此間中《このあひだぢう》は何《ど》うも忙《いそが》し過《すぎ》て降参したから」と誠吾は火の消えた葉巻《はまき》を口《くち》に啣えた。代助は自分の傍《そば》にあつた燐寸《まつち》を擦《す》つて遣《や》つた。
「代《だい》さん貴方《あなた》こそ気楽ぢやありませんか」と云ひながら梅子が椽側から帰《かへ》つて来《き》た。
「姉《ねえ》さん歌舞伎座へ行
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