して見ると、平岡の事情は、依然として発展してゐなかつた。もう近頃は運動しても当分駄目だから、毎日|斯《か》うして遊《あそ》んで歩《ある》く。それでなければ、宅《うち》に寐《ね》てゐるんだと云つて、大きな声を出《だ》して笑つて見せた。代助もそれが可《よ》からうと答へたなり、後《あと》は当《あた》らず障らずの世間話《せけんばなし》に時間《じかん》を潰《つぶ》してゐた。けれども自然に出《で》る世間|話《ばなし》といふよりも、寧ろある問題を回避する為《ため》の世間話《せけんばなし》だから、両方共に緊張《きんちよう》を腹《はら》の底《そこ》に感《かん》じてゐた。
 平岡は三千代の事も、金《かね》の事も口《くち》へ出《だ》さなかつた。従《した》がつて三日前《みつかまへ》代助が彼《かれ》の留守宅を訪問した事に就ても何も語《かた》らなかつた。代助も始めのうちは、わざと、その点に触《ふ》れないで澄《すま》してゐたが、何時《いつ》迄|経《た》つても、平岡の方で余所《よそ》々々しく構へてゐるので、却つて不安になつた。
「実は二三日|前《まへ》君の所《ところ》へ行つたが、君は留守だつたね」と云ひ出した。
「う
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