、自分とは全く無関係のものが、其所《そこ》に無作法に横《よこた》はつてゐる様に思はれて来《き》た。さうなると、今迄は気が付《つ》かなかつたが、実《じつ》に見るに堪えない程醜くいものである。毛が不揃《むら》に延《の》びて、青《あを》い筋《すぢ》が所々《ところ/″\》に蔓《はびこ》つて、如何にも不思議な動物である。
代助は又|湯《ゆ》に這入つて、平岡の云つた通り、全たく暇《ひま》があり過《す》ぎるので、こんな事迄考へるのかと思つた。湯から出《で》て、鏡に自分の姿を写《うつ》した時、又平岡の言葉を思ひ出《だ》した。幅の厚《あつ》い西洋|髪剃《かみそり》で、顎《あご》と頬を剃《そ》る段《だん》になつて、其|鋭《する》どい刃《は》が、鏡《かゞみ》の裏《うら》で閃《ひらめ》く色が、一種むづ痒《がゆ》い様な気持を起《おこ》さした。是《これ》が烈敷《はげしく》なると、高い塔の上から、遥かの下《した》を見下《みおろ》すのと同じになるのだと意識しながら、漸く剃り終《おは》つた。
茶の間《ま》を抜《ぬ》け様とする拍子に、
「何《ど》うも先生は旨《うま》いよ」と門野《かどの》が婆《ばあ》さんに話《はな》し
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