い、かねて自分を愚弄する様な気がするので、矢っ張り平生の代助の通り、のらくらした所を、彼方《あつち》へ行《い》つたり此方《こつち》へ来《き》たりして、飲んでゐた。飲みながらも、親爺《おやぢ》の所謂熱誠が足りないとは、此所《こゝ》の事だなと考へた。けれども、代助は泣いて人を動かさうとする程、低級趣味のものではないと自信してゐる。凡そ何が気障《きざ》だつて、思はせ振りの、涙や、煩悶や、真面目や、熱誠ほど気障《きざ》なものはないと自覚してゐる。兄《あに》には其辺の消息がよく解《わか》つてゐる。だから此手で遣《や》り損《そこ》なひでもしやうものなら、生涯自分の価値を落《おと》す事になる。と気が付《つ》いてゐる。
 代助は飲むに従つて、段々|金《かね》を遠《とほ》ざかつて来《き》た。たゞ互が差し向ひであるが為めに、旨《うま》く飲《の》めたと云ふ自覚を、互に持ち得る様な話をした。が茶漬を食ふ段《だん》になつて、思ひ出した様に、金《かね》は借りなくつても好《い》いから、平岡を何処《どこ》か使《つか》つて遣《や》つて呉れないかと頼《たの》んだ。
「いや、さう云ふ人間は御免蒙る。のみならず此不景気ぢや仕
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