凝《じつ》と見た。さうして二人《ふたり》で笑ひ出した。
「そんなに急《いそ》ぐなら、今日《けふ》ぢや、何《ど》うだ。今日《けふ》なら可《い》い。久し振《ぶ》りで一所に飯《めし》でも食《く》はうか」
代助は賛成した。所が倶楽部《くらぶ》へでも行《ゆ》くかと思ひの外《ほか》、誠吾は鰻《うなぎ》が可《よ》からうと云ひ出した。
「絹帽《シルクハツト》で鰻《うなぎ》屋へ行くのは始《はじめ》てだな」と代助は逡巡した。
「何《なに》構《かま》ふものか」
二人《ふたり》は園遊会を辞して、車《くるま》に乗つて、金杉橋《かなすぎばし》の袂《たもと》にある鰻屋《うなぎや》へ上《あが》つた。
五の五
其所《そこ》は河《かは》が流れて、柳《やなぎ》があつて、古風な家《いへ》であつた。黒《くろ》くなつた床柱《とこばしら》の傍《わき》の違《ちが》ひ棚《だな》に、絹帽《シルクハツト》を引繰返《ひつくりかへ》しに、二つ並《なら》べて置いて見て、代助は妙だなと云《い》つた。然し明《あ》け放《はな》した二階の間《ま》に、たつた二人《ふたり》で胡坐《あぐら》をかいてゐるのは、園遊会より却つて楽《らく》
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