衝突する、衝突の結果はどうあらうとも潔よく自分で受ける。是が代助の予期であつた。父《ちゝ》の仕打《しうち》は彼《かれ》の予期以外に面白くないものであつた。其仕打は父《ちゝ》の人格を反射する丈夫丈多く代助を不愉快にした。
 代助は途《みち》すがら、何《なに》を苦《くるし》んで、父《ちゝ》との会見を左迄に急いだものかと思ひ出《だ》した。元来が父《ちゝ》の要求に対する自分の返事に過ぎないのだから、便宜は寧ろ、是を待ち受ける父《ちゝ》の方にあるべき筈であつた。其|父《ちゝ》がわざとらしく自分を避ける様にして、面会を延《の》ばすならば、それは自己の問題を解決する時間が遅くなると云ふ不結果を生ずる外に何《なに》も起り様がない。代助は自分の未来に関する主要な部分は、もう既に片付《かたづ》けて仕舞つた積《つもり》でゐた。彼は父《ちゝ》から時日を指定して呼び出《だ》される迄は、宅《うち》の方の所置を其儘にして放つて置く事に極めた。
 彼は家《いへ》に帰つた。父《ちゝ》に対しては只|薄暗《うすぐら》い不愉快の影《かげ》が頭《あたま》に残つてゐた。けれども此影は近き未来に於て必ず其|暗《くら》さを増してくるべき性質のものであつた。其他には眼前に運命の二つの潮流を認めた。一つは三千代と自分が是から流れて行くべき方向を示してゐた。一つは平岡と自分を是非共一所に捲《ま》き込むべき凄《すさま》じいものであつた。代助は此間《このあひだ》三千代に逢《あ》つたなりで、片片《かたかた》の方は捨てゝある。よし是《これ》から三千代の顔《かほ》を見るにした所で、――また長い間《あひだ》見ずにゐる気はなかつたが、――二人《ふたり》の向後取るべき方針に就て云へば、当分は一歩も現在状態より踏み出す了見は持たなかつた。此点に関して、代助は我ながら明瞭な計画を拵《こしら》えてゐなかつた。平岡と自分とを運び去るべき将来に就ても、彼はたゞ何時《いつ》、何事《なにごと》にでも用意ありと云ふ丈であつた。無論彼は機《き》を見て、積極的に働らき掛ける心組はあつた。けれども具体的な案は一つも準備しなかつた。あらゆる場合に於て、彼の決して仕損《しそん》じまいと誓つたのは、凡てを平岡に打ち明けると云ふ事であつた。従つて平岡と自分とで構成すべき運命の流は黒《くろ》く恐ろしいものであつた。一つの心配は此恐ろしい暴風《あらし》の中《なか》から
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