+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つて、
「打ち明《あ》けて下《くだ》さらなくつても可《い》いから、何故《なぜ》」と云ひ掛《か》けて、一寸《ちよつと》※[#「足へん+厨」、第3水準1−92−39]躇《ちうちよ》したが、思ひ切つて、「何故《なぜ》棄《す》てゝ仕舞つたんです」と云ふや否や、又|手帛《ハンケチ》を顔《かほ》に当《あ》てゝ又|泣《な》いた。
「僕《ぼく》が悪《わる》い。堪忍して下《くだ》さい」
代助は三千代の手頸《てくび》を執《と》つて、手帛《ハンケチ》を顔《かほ》から離《はな》さうとした。三千代は逆《さから》はうともしなかつた。手帛《ハンケチ》は膝の上《うへ》に落ちた。三千代は其|膝《ひざ》の上《うへ》を見た儘《まゝ》、微《かす》かな声で、
「残酷だわ」と云つた。小さい口元《くちもと》の肉《にく》が顫《ふる》ふ様に動いた。
「残酷と云はれても仕方がありません。其代り僕は夫丈《それだけ》の罰《ばつ》を受《う》けてゐます」
三千代は不思議な眼《め》をして顔《かほ》を上《あ》げたが、
「何《ど》うして」と聞《き》いた。
「貴方《あなた》が結婚して三年以上になるが、僕はまだ独身《どくしん》でゐます」
「だつて、夫《それ》は貴方《あなた》の御勝手ぢやありませんか」
「勝手ぢやありません。貰《もら》はうと思つても、貰《もら》へないのです。それから以後、宅《うち》のものから何遍結婚を勧められたか分《わか》りません。けれども、みんな断つて仕舞ひました。今度《こんど》も亦|一人《ひとり》断《ことわ》りました。其結果僕と僕の父《ちゝ》との間《あひだ》が何《ど》うなるか分《わか》りません。然し何《ど》うなつても構はない、断《ことわ》るんです。貴方《あなた》が僕に復讐《ふくしう》してゐる間《あひだ》は断《ことわ》らなければならないんです」
「復讐」と三千代は云つた。此二字を恐るゝものゝ如くに眼《め》を働《はたら》かした。「私《わたくし》は是でも、嫁《よめ》に行《い》つてから、今日《こんにち》迄|一日《いちにち》も早く、貴方《あなた》が御結婚なされば可《い》いと思はないで暮《く》らした事はありません」と稍|改《あら》たまつた物の言《い》ひ振《ぶり》であつた。然し代助はそれに耳を貸さなかつた。
「いや僕は貴方《あなた》に何所《どこ》迄も復讐して貰《もら》ひたいのです。それが
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