の未亡人《びぼうじん》だけあって要領を得ていました。私は医者の所へも行きました。また警察へも行きました。しかしみんな奥さんに命令されて行ったのです。奥さんはそうした手続《てつづき》の済むまで、誰もKの部屋へは入《い》れませんでした。
 Kは小さなナイフで頸動脈《けいどうみゃく》を切って一息《ひといき》に死んでしまったのです。外《ほか》に創《きず》らしいものは何にもありませんでした。私が夢のような薄暗い灯《ひ》で見た唐紙の血潮は、彼の頸筋《くびすじ》から一度に迸《ほとばし》ったものと知れました。私は日中《にっちゅう》の光で明らかにその迹《あと》を再び眺《なが》めました。そうして人間の血の勢《いきお》いというものの劇《はげ》しいのに驚きました。
 奥さんと私はできるだけの手際《てぎわ》と工夫を用いて、Kの室《へや》を掃除しました。彼の血潮の大部分は、幸い彼の蒲団《ふとん》に吸収されてしまったので、畳はそれほど汚れないで済みましたから、後始末[#「後始末」は底本では「後始未」]はまだ楽でした。二人は彼の死骸《しがい》を私の室に入れて、不断の通り寝ている体《てい》に横にしました。私はそれから彼
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