ってしまったのです。Kに詫まる事のできない私は、こうして奥さんとお嬢さんに詫《わ》びなければいられなくなったのだと思って下さい。つまり私の自然が平生《へいぜい》の私を出し抜いてふらふらと懺悔《ざんげ》の口を開かしたのです。奥さんがそんな深い意味に、私の言葉を解釈しなかったのは私にとって幸いでした。蒼い顔をしながら、「不慮の出来事なら仕方がないじゃありませんか」と慰めるようにいってくれました。しかしその顔には驚きと怖《おそ》れとが、彫《ほ》り付けられたように、硬《かた》く筋肉を攫《つか》んでいました。

     五十

「私は奥さんに気の毒でしたけれども、また立って今閉めたばかりの唐紙《からかみ》を開けました。その時Kの洋燈《ランプ》に油が尽きたと見えて、室《へや》の中はほとんど真暗《まっくら》でした。私は引き返して自分の洋燈を手に持ったまま、入口に立って奥さんを顧みました。奥さんは私の後ろから隠れるようにして、四畳の中を覗《のぞ》き込みました。しかしはいろうとはしません。そこはそのままにしておいて、雨戸を開けてくれと私にいいました。
 それから後《あと》の奥さんの態度は、さすがに軍人
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