はKの答えがありません。その代り五、六分経ったと思う頃に、押入《おしいれ》をがらりと開けて、床《とこ》を延べる音が手に取るように聞こえました。私はもう何時《なんじ》かとまた尋ねました。Kは一時二十分だと答えました。やがて洋燈《ランプ》をふっと吹き消す音がして、家中《うちじゅう》が真暗なうちに、しんと静まりました。
しかし私の眼はその暗いなかでいよいよ冴《さ》えて来るばかりです。私はまた半ば無意識な状態で、おいとKに声を掛けました。Kも以前と同じような調子で、おいと答えました。私は今朝《けさ》彼から聞いた事について、もっと詳しい話をしたいが、彼の都合はどうだと、とうとうこっちから切り出しました。私は無論|襖越《ふすまごし》にそんな談話を交換する気はなかったのですが、Kの返答だけは即坐に得られる事と考えたのです。ところがKは先刻《さっき》から二度おいと呼ばれて、二度おいと答えたような素直《すなお》な調子で、今度は応じません。そうだなあと低い声で渋っています。私はまたはっと思わせられました。
三十九
「Kの生返事《なまへんじ》は翌日《よくじつ》になっても、その翌日になっても、
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