の時気分が悪いといったのを気にして、奥さんは十時頃|蕎麦湯《そばゆ》を持って来てくれました。しかし私の室《へや》はもう真暗《まっくら》でした。奥さんはおやおやといって、仕切りの襖《ふすま》を細目に開けました。洋燈《ランプ》の光がKの机から斜《なな》めにぼんやりと私の室に差し込みました。Kはまだ起きていたものとみえます。奥さんは枕元《まくらもと》に坐って、大方《おおかた》風邪《かぜ》を引いたのだろうから身体《からだ》を暖《あっ》ためるがいいといって、湯呑《ゆのみ》を顔の傍《そば》へ突き付けるのです。私はやむをえず、どろどろした蕎麦湯を奥さんの見ている前で飲みました。
私は遅くなるまで暗いなかで考えていました。無論一つ問題をぐるぐる廻転《かいてん》させるだけで、外《ほか》に何の効力もなかったのです。私は突然Kが今隣りの室で何をしているだろうと思い出しました。私は半ば無意識においと声を掛けました。すると向うでもおいと返事をしました。Kもまだ起きていたのです。私はまだ寝ないのかと襖ごしに聞きました。もう寝るという簡単な挨拶《あいさつ》がありました。何をしているのだと私は重ねて問いました。今度
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