彼の態度によく現われていました。彼は自分から進んで例の問題に触れようとする気色《けしき》を決して見せませんでした。もっとも機会もなかったのです。奥さんとお嬢さんが揃《そろ》って一日|宅《うち》を空《あ》けでもしなければ、二人はゆっくり落ち付いて、そういう事を話し合う訳にも行かないのですから。私《わたくし》はそれをよく心得ていました。心得ていながら、変にいらいらし出すのです。その結果始めは向うから来るのを待つつもりで、暗《あん》に用意をしていた私が、折があったらこっちで口を切ろうと決心するようになったのです。
同時に私は黙って家《うち》のものの様子を観察して見ました。しかし奥さんの態度にもお嬢さんの素振《そぶり》にも、別に平生《へいぜい》と変った点はありませんでした。Kの自白以前と自白以後とで、彼らの挙動にこれという差違が生じないならば、彼の自白は単に私だけに限られた自白で、肝心《かんじん》の本人にも、またその監督者たる奥さんにも、まだ通じていないのは慥《たし》かでした。そう考えた時私は少し安心しました。それで無理に機会を拵《こしら》えて、わざとらしく話を持ち出すよりは、自然の与えてく
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