は僅《わず》か一、二|尺《しゃく》しかないのですから、手もなく往来に敷いてある帯の上を踏んで向うへ越すのと同じ事です。行く人はみんな一列になってそろそろ通り抜けます。私はこの細帯の上で、はたりとKに出合いました。足の方にばかり気を取られていた私は、彼と向き合うまで、彼の存在にまるで気が付かずにいたのです。私は不意に自分の前が塞《ふさ》がったので偶然眼を上げた時、始めてそこに立っているKを認めたのです。私はKにどこへ行ったのかと聞きました。Kはちょっとそこまでといったぎりでした。彼の答えはいつもの通りふんという調子でした。Kと私は細い帯の上で身体を替《かわ》せました。するとKのすぐ後ろに一人の若い女が立っているのが見えました。近眼の私には、今までそれがよく分らなかったのですが、Kをやり越した後《あと》で、その女の顔を見ると、それが宅《うち》のお嬢さんだったので、私は少なからず驚きました。お嬢さんは心持薄赤い顔をして、私に挨拶《あいさつ》をしました。その時分の束髪《そくはつ》は今と違って廂《ひさし》が出ていないのです、そうして頭の真中《まんなか》ノ蛇《へび》のようにぐるぐる巻きつけてあった
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