した。養家先《ようかさき》へ対して済まないという義理が加わっているからでもありましょうが、こっちでも一切《いっさい》構わないと書いてありました。Kがこの事件のために復籍してしまうか、それとも他《た》に妥協の道を講じて、依然養家に留《とど》まるか、そこはこれから起る問題として、差し当りどうかしなければならないのは、月々に必要な学資でした。
 私はその点についてKに何か考《かんが》えがあるのかと尋ねました。Kは夜学校《やがっこう》の教師でもするつもりだと答えました。その時分は今に比べると、存外《ぞんがい》世の中が寛《くつ》ろいでいましたから、内職の口はあなたが考えるほど払底《ふってい》でもなかったのです。私はKがそれで充分やって行けるだろうと考えました。しかし私には私の責任があります。Kが養家の希望に背《そむ》いて、自分の行きたい道を行こうとした時、賛成したものは私です。私はそうかといって手を拱《こまぬ》いでいる訳にゆきません。私はその場で物質的の補助をすぐ申し出しました。するとKは一も二もなくそれを跳《は》ね付けました。彼の性格からいって、自活の方が友達の保護の下《もと》に立つより遥《は
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