るか》に快よく思われたのでしょう。彼は大学へはいった以上、自分一人ぐらいどうかできなければ男でないような事をいいました。私は私の責任を完《まっと》うするために、Kの感情を傷つけるに忍びませんでした。それで彼の思う通りにさせて、私は手を引きました。
 Kは自分の望むような口をほどなく探し出しました。しかし時間を惜《お》しむ彼にとって、この仕事がどのくらい辛《つら》かったかは想像するまでもない事です。彼は今まで通り勉強の手をちっとも緩《ゆる》めずに、新しい荷を背負《しょ》って猛進したのです。私は彼の健康を気遣《きづか》いました。しかし剛気《ごうき》な彼は笑うだけで、少しも私の注意に取り合いませんでした。
 同時に彼と養家との関係は、段々こん絡《がら》がって来ました。時間に余裕のなくなった彼は、前のように私と話す機会を奪われたので、私はついにその顛末《てんまつ》を詳しく聞かずにしまいましたが、解決のますます困難になってゆく事だけは承知していました。人が仲に入って調停を試みた事も知っていました。その人は手紙でKに帰国を促《うなが》したのですが、Kは到底|駄目《だめ》だといって、応じませんでした
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