ぱらそうそう級友の一人から調戯《からか》われました。いつ妻《さい》を迎えたのかといってわざとらしく聞かれるのです。それから私の細君《さいくん》は非常に美人だといって賞《ほ》めるのです。私は三人|連《づれ》で日本橋へ出掛けたところを、その男にどこかで見られたものとみえます。

     十八

「私は宅《うち》へ帰って奥さんとお嬢さんにその話をしました。奥さんは笑いました。しかし定めて迷惑だろうといって私の顔を見ました。私はその時腹のなかで、男はこんな風《ふう》にして、女から気を引いて見られるのかと思いました。奥さんの眼は充分私にそう思わせるだけの意味をもっていたのです。私はその時自分の考えている通りを直截《ちょくせつ》に打ち明けてしまえば好かったかも知れません。しかし私にはもう狐疑《こぎ》という薩張《さっぱ》りしない塊《かたま》りがこびり付いていました。私は打ち明けようとして、ひょいと留《と》まりました。そうして話の角度を故意に少し外《そ》らしました。
 私は肝心《かんじん》の自分というものを問題の中から引き抜いてしまいました。そうしてお嬢さんの結婚について、奥さんの意中を探ったのです
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